ロマン・ロランと生きる

フランスの作家ロマン・ロラン(1866~1944)に関する情報を発信するブログです。戦中・戦後の混乱期に幼年時代を過ごした人々の間では、ロランは必読書だったそうです。人生の師と仰ぐ人も少なくありません。現代の若者にはあまり読まれていないようですが、ロランと同じ精神の家系に属している人は少なからずいるはず。本ブログがロランの精神的兄弟たちを結び付ける場になれば幸いです。

自筆 Autographe

ロマン・ロラン自筆書簡【15】再婚報告

晩年の再婚 ~~~~~~~~~~ あなたにお知らせしたいことがあります。 驚かせてしまうでしょうが、私の再婚についてです ~~~~~~~~~~ フランスの作家ロマン・ロランの自筆書簡である。スイスのヴィルヌーヴで書かれたもので、1934年5月7…

ロマン・ロラン自筆書簡【14】サン=プリ家⑥

政治との距離感 私の戦いは芸術の中にあるのです フランスの作家ロマン・ロランの自筆書簡である。1921年7月29日付。1919年に没した愛弟子ジャン・ド・サン=プリの弟、ピエール・ド・サン=プリに宛てたもの。 【意訳】 妹からあなたのお手紙を…

ロマン・ロラン自筆書簡【13】サン=プリ家⑤

痛みを分かつ あなたとともに 今は亡き人(ずっと心の中にいる)に 語りかけております フランスの作家ロマン・ロランの自筆書簡である。1921年1月2日付。愛弟子ジャン・ド・サン=プリの母に宛てたもの。ジャンは1919年2月18日、スペイン風邪…

ロマン・ロラン自筆書簡【12】サン=プリ家④

友人の仲を取り持つ 人が孤立するのは 決して喜びからではありません。 誇りがあるから、 そうせざるを得ないから孤独になるのです フランスの作家ロマン・ロランの自筆書簡である。1922年2月19日付。愛弟子ジャン・ド・サン=プリの弟であるピエール…

ロマン・ロラン自筆書簡【11】1911年2月13日付

ただ強くあること 芸術家は芸術のことばかり話していてはいけません。 彼の内面生活はそれで飽和してしまいます。 自分自身を更新するために、 自分の外に踏み出さなければならないのです。 フランスの作家ロマン・ロランの自筆書簡である。1911年2月1…

アンリ・マシス自筆書簡【1】

ロマン・ロランの敵手 R・ロラン氏のものを再読する必要もありましたが、 私にはその勇気がありませんでした フランスの評論家アンリ・マシス(1886~1970)の自筆書簡である。いつ・誰に宛てて書かれたものかは不明。具体的な事情は分からないが、…

ロマン・ロラン著『第九交響曲』自筆献辞入り

ベートーヴェンの「全書」 日常の苦しい闘いを強いられていた時、 ベートーヴェンはその交響曲という騎兵隊のなかで 私を鍛えてくれた隊長であった。 (みすず書房『ロマン・ロラン全集【25】』所収 「第九交響曲」蛯原徳夫・北沢方邦訳 P9) 本書はフラ…

ロマン・ロラン自筆書簡【10】ソ連とのつながり

人間共和の実現を夢見て コラはソビエト連邦で有名になりました。 フランスの作家ロマン・ロランの自筆書簡である。1936年6月17日付。生まれ故郷クラムシー在住の編集者ヴィロワン・グレ(Viloin-Goulet)に宛てたもの。自らの小説『コラ・ブルニョン…

ロマン・ロラン自筆書簡【9】アリス・カンプマン宛

先輩作家としての助言 さあ息を吹きかけて、 炎をかき立ててください! ロマン・ロランの自筆書簡である。1928年11月9日付。エコール・ノルマル(高等師範学校)で共に学んだ旧友アンドレ・シュアレスの秘書アリス・カンプマンの自伝的小説『コンスタ…

ロマン・ロラン自筆草稿【1】ベートーヴェン研究

内容と外観の美しい調和 真の創造は、たとい最悪の苦悩を 代価として贖(あがな)われようとも、 なお喜びにほかならないのだ (みすず書房『ロマン・ロラン全集【23】』所収 「ベートーヴェン 偉大な創造の時期 エロイカからアパッショナータまで」佐々木…

ロマン・ロラン タイプ原稿【1】 劇作について

衰えない創作の熱意 私はまだまだ無謀ですよ。 71歳になって、書きたい作品やアイデアが 10年、20年分もあるのですから。 フランスの作家ロマン・ロランのタイプ原稿である。1937年2月9日、ロランの自宅があったスイス・ヴィルヌーヴで書かれた…

ロマン・ロラン著『アグリゲンツムのエンペドクレス』1918年 初版本

戦乱を超えて輝く真実の星を示す われわれはみな「憎み」から自己を解放し―― 「悪からわれわれを解放し」(libera nos a malo)―― 平和を獲得するために闘わねばならない。 これは各人の、また万人の仕事でなければならない (宮本正清訳『ロマン・ロラン全…

ロマン・ロラン著『アエルト』1898年 初版本

幼い反抗の悲劇 (アエルト)屈辱的な妥協や 卑怯なあきらめは大きらいです (波多野茂弥訳『ロマン・ロラン全集【9】』 所収「アエルト」みすず書房 P189) ロマン・ロランの戯曲『アエルト』である。1898年に「劇芸術評論」から出た初版本で、見…

ロマン・ロラン著『愛と死との戯れ』校正刷り

成熟に20年を要した傑作戯曲 生命の力は死の力より強い (片山敏彦訳『ロマン・ロラン全集【10】』所収 「愛と死との戯れ」みすず書房 P352) ロマン・ロランの戯曲『愛と死との戯れ』の校正刷りである。1925年に出たサブリエ版の校正刷りで、「…

ロマン・ロラン イストラティ 自筆葉書

友情の果て R・Rはぼくにとって小事件ではなかった フランスの作家ロマン・ロランと、ロランに見いだされたルーマニア生まれの仏語作家パナイト・イストラティの自筆である。1926年4月24日付で、イストラティの妻アンナに宛てたもの。当時ロランが…

『ロマン・ロラン選文集』イストラティ宛・自筆献辞

父親のような愛情 世界をあるがままに見て 愛そうとしている(なかなかうまくいかないが!) ひとりの男へ 友情をこめて 1921年にオランドルフ社から出た『ロマン・ロラン選文集』の第1巻である。ロランが才能を見いだし、世に送り出した作家パナイト・…

ロマン・ロラン『先駆者たち』1919年 初版本

ユニテに導く未来の書 この世界が苦しんでいる最悪の不幸は、 わたしが繰り返し繰り返し言ったように、 邪悪な人々の力ではなく、 最良の人々の弱さなのである(中略) もう自分自身で考えるべきではない、 ひっぱって行ってもらおう……。 この放棄こそ、すべ…

ロマン・ロラン著『戦いを超えて』自筆献辞

憎しみを超えて人間性救う 私は一年このかた非常に多くの敵を見出した。 私は彼らに次のことを言いたい―― 彼らは私を憎むことはできようが、 私に憎しみを教えることはできないであろう。 私は彼らに用はない。私の務めは、 私が正しく人間的(ユマン)だと…

ロマン・ロラン 自筆 戦時の日記

孤独な作家を支えた声 自己の確信と人間的な友愛への理想とに 忠実であり続けている労働者の間で、 あなたの言葉が深い反響を呼び覚ましたことを断言します。 フランスの作家ロマン・ロランが第1次大戦中に書き記していた「戦時の日記」の一葉である。ロラ…

ロマン・ロラン自筆書簡【8】結婚前夜

初めての結婚と離婚 私は芸術への意欲を持っています(中略) どうかこの芸術への意欲を 打毀(うちこわ)さないように、 むしろそれを仕遂げるために 私に力を借して下さるようにお願い致します (加藤行立訳「ロマン・ロラン研究【31】」ロマン・ロラン…

ロマン・ロラン自筆書簡【7】戦いを超えて

戦いの記録 私のフランスの友人の一人が、 小冊子「戦いを超えて」の発行に 力を尽くしてくれています。 フランスの作家ロマン・ロランの自筆書簡である。1915年1月6日付。国際赤十字の便箋に書かれている。 1914年7月、第一次世界大戦が勃発。ス…

ロマン・ロラン自筆書簡【6】サン=プリ家③

ジャンを偲んで 私にとっては1年に1度の つらい日がまた来てしまうという気持ちです。 フランスの作家ロマン・ロランが、22歳で亡くなった愛弟子ジャン・ド・サン=プリの母親に宛てた自筆書簡である。ジャンの死から1年後の1920年2月17日付。ま…

ロマン・ロラン自筆書簡【5】サン=プリ家②

愛弟子に捧ぐ 私たちのジャンは、 すべての卑俗なものを超えています フランスの作家ロマン・ロランの自筆書簡である。彼の愛弟子で夭逝したジャン・ド・サン=プリの書簡集にロランが序文を書くかどうかについて、ジャンの弟ピエールとやり取りしている。 …

ロマン・ロラン自筆書簡【4】サン=プリ家①

愛弟子との出会いと別れ ジャンへの愛情はこれ以後、 わたしたちにとって絆です! わたしはわたしの内面生活において 親愛なかわいい道づれに場所を保つでしょう。 フランスの作家ロマン・ロランが唯一、自らの「愛弟子」と呼んだ人にジャン・ド・サン=プリ…

ロマン・ロラン自筆書簡【3】

人類の未来への危惧 政治的にも社会的にも、 本当の世界の歴史とは 人類の進化の歴史なのです 1925年4月22日に書かれたロマン・ロラン自筆の手紙である。歴史家のマルセル・ベカス※に宛てたもので発信地はスイスのヴィルヌーヴ。ベカスがロランに送っ…

ロマン・ロラン自筆書簡【2】

生涯にわたる青年期の体験 ローマの影響は 私の全作品におよんでいる 1925年7月1日、某氏宛に書かれたロマン・ロラン自筆の手紙である。ロランは1889~1891年までイタリア・ローマに留学したが、その際に啓発を受けて書かれた論文等のリストを…

ロマン・ロラン自筆書簡【1】

若きジャーナリストへの手紙 私の行動と作品こそ 非難に対する唯一の答えだ 1930年4月22日に書かれたロマン・ロラン自筆の手紙である。若きジャーナリスト Georges Altman に宛てたもの。 「私は15年前から、 辛辣に批判されようと知らん顔をするこ…

アンドレ・モロワ自筆原稿【2】ロマン・ロランの手紙②

高貴で悲劇的な友情 ルイ・ジレとロマン・ロランの往復書簡は、 2人の偉大な人物と偉大な心情との素晴らしい物語だ。 それは友愛と人間性の教えとなり、希望となるだろう。 フランスの作家アンドレ・モロワの自筆原稿である。カイエ・ロマン・ロランの第2…

アンドレ・モロワ自筆原稿【1】「ロマン・ロランの手紙」

書簡集の面白さ 年齢を重ね、読書に励むにつれ、 往復書簡や回想録をより好むようになってきた。 偉大な作家でさえ、 自身の内面を書き記すことに成功した小説を 多くは残していないからだ。 ロマン・ロランのこれらの手紙が 『ジャン=クリストフ』に優ると…

マルヴィーダ・フォン・マイゼンブーク自筆書簡【2】

青年との共闘 お金の持つ巨大な力や人間の金欲が、 一方では富裕層などの良心を腐敗させ、 他方では貧困層などを自暴自棄や犯罪へ駆り立てています。 ここイタリアが、その惨憺たる例です。 戦いましょう! 私はそう長くはお役に立てないでしょう。 しかし、…