ロマン・ロラン自筆書簡【12】サン=プリ家④
友人の仲を取り持つ
人が孤立するのは
決して喜びからではありません。
誇りがあるから、
そうせざるを得ないから孤独になるのです
フランスの作家ロマン・ロランの自筆書簡である。1922年2月19日付。愛弟子ジャン・ド・サン=プリの弟であるピエール・ド・サン=プリに宛てたものだ。
第一次世界大戦中の日記に、ロランは「いつも、私は友人相互間に和解を回復させなければならない」※と記した。本書簡ではまだ21歳のピエールに対し、思うに任せない人生を投げ出さずに生きてきた、詩人P・J・ジューヴへの理解を促している。
【意訳】
きみはジューヴと仲良くあろうとして、
かえって悲しませてしまったのでしょう。
きみに「喜んで孤立している」などと言われたら、
少し辛辣な皮肉に感じるはずです。
どういうつもりですか? トスカーナのことでしょうか?
やむなく故郷を離れ、流浪の身となり、
わが子が重病になっての不安と快癒しての喜び――。
それは並大抵のことではありませんよ。
それとも詩集を103部印刷させたことでしょうか?
もしそうなら、ああ友よ、
現代の詩人が置かれている物質的な状況から
「孤立」しているのはきみの方です。
私はジューヴが、この出版のために
費用を負担したことを知っています。
きみは1000部とか1万部とか
刷ればいいのにと思っていませんか?
その費用を一体誰が出すのですか?
出版社は出しませんよ。
このご時世に売れる当てもなく、
出版社にも属さずに
詩を印刷させることがほとんど不可能なことは、
きみも疑いのないところでしょう。
私もペギーに出会って、そのことを知りました。
人が孤立するのは決して喜びからではありません。
誇りがあるから、
そうせざるを得ないから孤独になるのです(後略)