ロマン・ロラン自筆書簡【6】サン=プリ家③
ジャンを偲んで
私にとっては1年に1度の
つらい日がまた来てしまうという気持ちです。
フランスの作家ロマン・ロランが、22歳で亡くなった愛弟子ジャン・ド・サン=プリの母親に宛てた自筆書簡である。ジャンの死から1年後の1920年2月17日付。まだ癒えぬ悲しみを分かち合い、ジャンを偲んでいる。
「このところ私は、
あなたのことをよく考えております。
ジャンの友人たちは皆、
彼を偲ぶやるせない気持ちを
あなたのお心に重ねています。
そんな友人たちの誰よりも、
私はあなたの悲しみを感じています。
私にとっては1年に1度の
つらい日がまた来てしまうという気持ちです。
とても優しい詩を送ってくださり、
どうもありがとうございました。
読んだことがある気がします。
昨年、私に預けてくださった
ジャンが子どものころの原稿に
入っていたのだと思います。
ああ、その詩の気丈な精神が
あなたの慰めになるのなら
どんなにいいでしょうか」――(後略)
この手紙でロランが言及しているジャンの詩稿が具体的にどのようなものだったかは分からないが、筆者の手元にはジャンが7~8歳のころ(1903~1904年)に書いたと思われる詩稿がある。専門家の鑑定を経ていないので真偽は不明だが、ジャンの姪孫(てっそん・兄弟の孫)に当たる人物に確認したところ、ジャンの詩稿だろうとの回答を得た。
1903年に書かれた詩は、10歳になる子どもを亡くした親の絶望と、新たな子どもの誕生という希望をテーマにしたもの。1904年に書かれた詩「夜」は、乞食に慈善を施した男が、女神に枯れることのないバラで飾られた城を贈られるというおとぎ話風の作品になっている。
1903年に書かれた詩。用紙の裏には落書きがある。
1904年に書かれた詩「夜」