ロマン・ロランと生きる

フランスの作家ロマン・ロラン(1866~1944)に関する情報を発信するブログです。戦中・戦後の混乱期に幼年時代を過ごした人々の間では、ロランは必読書だったそうです。人生の師と仰ぐ人も少なくありません。現代の若者にはあまり読まれていないようですが、ロランと同じ精神の家系に属している人は少なからずいるはず。本ブログがロランの精神的兄弟たちを結び付ける場になれば幸いです。

ロマン・ロラン自筆書簡【9】アリス・カンプマン宛


先輩作家としての助言

さあ息を吹きかけて、
炎をかき立ててください!


ロマン・ロランの自筆書簡である。1928年11月9日付。エコール・ノルマル(高等師範学校)で共に学んだ旧友アンドレ・シュアレスの秘書アリス・カンプマンの自伝的小説『コンスタン・ピシュ』について、原稿を読んだ感想をアリス本人に書き送っている。出版された単行本『コンスタン・ピシュ』に、シュアレスの自筆書簡と一緒に挟み込まれていた。

おそらく原稿の段階では画竜点睛を欠く状態だったのだろう。決定的場面で主人公の内部に灯った生命の炎をかき立てて、自然という完成を目指すように促している。

【意訳】
1928年11月9日付 ヴィルヌーヴ

仕事に追われており、
受け取ったすべての原稿を読む時間がありません。
しかし、あなたの原稿にざっと目を通したところ、
その質の高さに心を打たれました。
子ども時代の物語には哀愁を帯びた魅力があり、
不意の力強い魂のほとばしりも見られます。

私見を申し上げれば、
あなたはなぜ195ページを仕上げないのですか?
あなたはそこである状況、突然の心の動揺と叫び、
素晴らしい感情の高揚を発見されました。
それは思いがけないものであると同時に、
あなたのキャラクターの内部に隠れていた論理なのです。

なぜそこからまた、
現代文学の大部分がはまり込んでいる泥沼に陥るのですか?
その方がより現実的だからですか?
現実とは悲劇的なものでも、楽観的なものでもありません。
現実は私たちの目と生命力により創り上げられるものです。
ベーコンの芸術の命題に<自然に付加された人間>とあるように、
あなたのピシュは感情が高揚したまさにその瞬間、
自然に加えられるのです。

芸術は、生命(そこに存在し、あるいは生きようと願っている、
またはこれから始まる本当の生命)と一致して異議を唱えます。
ピシュは、あなたに与えられた玩具ではありません。
彼の中には最初から、作品よりも遠くから来る神秘の小さな炎が見えます。
もし彼が実在の人物だとしたら、その炎をどうしたか私には分かりません。
でも、あなたなら分かるでしょう。炎はあなたの手の中にあるのですから。
さあ息を吹きかけて、炎をかき立ててください!

心を込めて